「いじめや人権、話し合おう、変えていこう。Changers(チェンジャーズ)」というプロジェクトをチームで立ち上げ、活動を始めています。本プロジェクトは、いじめや人権に関する問題について話し合うためのデジタルマンガ教材を開発し、無料で広く公開していくものです。日常に生じる、抗いがたい「いじめゲーム」の「ルール」を「チェンジ」するにはどうすればよいか、みんなで話し合ってみてほしい――そんな願いがこめられての「Changers(チェンジャーズ)」というプロジェクト名となっています。ストップイットジャパンの谷山大三郎さん、303BOOKSの常松心平さん、現職小学校教員の下大澤翔吾さんをはじめとした、頼れるメンバーらとともに知恵を出し合って教材をつくっています。

3/1現在、最新のプレスリリースがこちらです。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000019347.html

HPには、現在のところ8編のデジタルマンガ教材が公開されています。道徳や特活、総合などで活用することが想定されているもので、どれも「自分なら、どうしようか」と戸惑うような、悩ましく考えがいのある問題が描かれていると思います。ぜひ一度ご覧ください。(そして、授業で実際に使っていただけると嬉しいです!)

公式HPはこちら
https://wearechangers.jp/

YouTubeチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/channel/UCrP-zzSxh0NxgsLxDao-Tjg

Twitterはこちら
https://twitter.com/wearechangersjp

©Y.Furumoto, Changers

上に書いたように、いじめは、ある種の「ゲーム」だと言うこともできるでしょう(これはもちろん比喩であり、いじめ=おもしろおかしいもの、と言いたい訳ではありません、念の為)。……たとえば、ある子Aへのいじりが発生する。それが続けられるうちに、「Aはいじられキャラなのだ」「いじられキャラだから過度にいじられても仕方ない」といった「ルール」のようなものができてきてしまう。その「ルール」はマニュアルのように明文化される訳ではないが、その分、透明の規範が子どもたちを強く束縛することになる。その「ルール」に従わなければ、今度は自分がいじられキャラになってしまう。成員らは「ルール」に従うふるまいを続け、集団の「ルール」は強化されていく。結果、抗いがたい「いじめゲーム」をみながプレイするようになる(せざるを得ないようになる)。ちがう、自分はいじめをしているんじゃない、「ルール」にそった「ゲーム」をプレイしているだけなんだ……

教材では、具体的な場面を描くことをとおして、普段は意識しづらい透明なルールや、ゲームプレイの中で感じるもやっとする思い(濁った思いというか、曇った思いというか)を明るみに出すことをねらいとしています。そして、教材を視聴した後には、そのルールやもやもやを変えていくにはどうすればよいか、子どもたち自身で探っていくような話し合いをしてもらえたら、と思っています。最近よく耳にする言葉で言えば、アップスタンダー(Upstander:行動を起こす人)教育とも言えるかもしれません。なお、HPにはモデル指導案もありますが、教室や子どもたちの状況に応じて、どのように使っていただいてももちろんOKです!

©K.Miyao, Changers

教材の大きな特徴は、マンガ家やイラストレーターさん、声優さんらをはじめとした多くのクリエイターの方々に協力をいただいていることです。透明なルールやもやもやした思いをうまく表現するために、その道のプロの方々にちからをお借りしました。「相談したいけど、したくない」という時の何とも言えない表情、作品・場面によってまったく違う「どうしよう」という声、など、「いじめゲーム」のリアリティをとてもうまく表現していただいたと思っています。HP内には、作家さんらのコメントもありますので、ぜひご覧いただきたいです。教材のパースペクティブが変わるかもしれません。

©Kuregure, Changers

私個人は非力ですが、多くの方々(Changers(チェンジャーズ)たち!)と協力しながら、いじめ防止に少しでも寄与できたらと思っています。教材は今後も拡充の予定があり、プロジェクトは進んでいきます。今後もぜひプロジェクトにご注目ください。たくさんの学校で教材が活用され、たくさんのChangers(チェンジャーズ)たちが生まれていったら……!

授業の様子


付記。声優さんによるアフレコの監督(というのだろうか)は、なりゆきで私が担当しました。もちろん初めての体験です。声優さんに「どんな声を出してほしいか」を伝えるためには、監督側が徹底的にその人物のことを理解しておく必要があると学びました。細かなニュアンスを伝える際に、「こんな感じで」ということを自分で演じるのは難しいため、そのかわりに人物の背景や心情などをていねいに説明することになります。誤解を恐れずに言えば、作業中は「教えたいこと」ではなく、「その人物」を描くことのみに、ただただ集中をしていたように思います。「教材」なのに、です。とても興味深い体験でした。問題はシリアスですが、制作はプレイフルに行っていきたいと思っています。(道徳授業では、心情追究型の授業は批判されることも多いのですが、今回の経験から、追究型そのものが悪いのではなく、追究するに値するほど人間のリアリティが描かれているのか?が重要なのでは、と思いました。このことは、追って検討しようと思っています)

アフレコ監督は初体験ではありましたが、昔バンドをやっていた際のレコーディングの経験がちょっぴり生かされた…かもしれません。