柏市立土小学校の校内研修会に参加。冒頭、「もう4年ほど関わっていただいて〜」とご紹介いただいたのだが(自分もああそうなのかと思った)、今調べてみたら初めて講師としてお邪魔したのはどうやら2年前のよう。それだけ濃い時間をご一緒できていたのだろうか! 昨年度は大きな公開授業もあり、なんとなくこれで一区切りかと達成感とさみしい思いを感じていたのだが、今年度もお呼びいただき、なんともありがたい気持ちである。
土小はここ数年、「オーセンティック・ラーニング」「問いストーリー」などのテーマを掲げ、総合・生活を中心に、教科を横断した探究学習、地域と連携したカリキュラムマネジメントなど、教育の現代的課題に瞬間的に全方位で切りかかっていた(九頭龍閃を連想する)。昨年度はともすると散漫になってしまいがちな全方位的取り組みを「つなぐ学び」というキーワードに集約していくことを目指した。この言葉はあれこれ探究をしてきた先生方から出てきた言葉であり、そのことに大きな価値があるように思う。また現代的課題をハックしようとするエネルギーを、いったんクールダウンさせるような、内省的な1年であったようにも思う(セル編で精神と時の部屋を出た悟空を連想する)。何にせよ、とてつもなく刺激的な2年間(?)をご一緒させていただいた。
さて、今年度。研究テーマはどうされるのかと思っていたが、今年度も「つなぐ学び」という研究テーマを継続されるとのこと。その上で、「つなぐ学び」による子どもの学びのあり様をていねいに追っていくことに注力したいとのこと。「子どもをみる」ということ自体は何ら新しいテーマではないかもしれないが、数年のプロセスを経て先生方が本当に必要だと思ったテーマ設定ということが良い意味で「着実」だと思う。
今日は今年度最初のお話ということで、昨年度の課題や成果として先生方から出されたコメント(★)についてコメント(→)する、それを今年度のヒントにかえる、ということにさせていただいた。
①「つなぐ学び」の多様性をどう解釈するか?
★「つなぐ」というテーマの幅が広く、具体的な実践方法に迷う場面もあった。
★初めは「つなぐ」という言葉が抽象的で、授業への落とし込みが難しかった。
→「つなぐ」チャンスが、多様にある。(地域、単元、生活、友だち、他学年…)
→それは、 「学びのチャンスを掴む」ためのきっかけが多様にあるということではないか。
→当然ながら、子どもたちは多様である。
すべての子が1つのやり方だけで
「学びのチャンスを掴む」のは難しい。多様な解釈がなされ、多様な実践が行われ、多様な子どもたちが、多様にチャンスを掴めたら、素晴らしいことではないか。単元で、1年間で、6年間で、大きく背伸びをするタイミングはひとりひとり違う。
②主体性を再考する
★児童が主体的に「つなぐ」ことを意識できるような仕掛けを増やす。まだ、すべての児童が主体的に学習に取り組んでいるわけではないため、さらなる工夫が必要である。
→主体性の解釈は難しい。
→「エージェンシー」(Agency)( OECD Education2030プロジェクトなど)
ア)自分で目標を設定し、振り返り、責任をもって行動する能力
イ)周囲に対して、積極的に良い方向に変わるように影響する能力
→「周囲に対して」がポイントか。主体的にと願うなら、他者(モノ含)とのかかわりを見る。
③「つなぐ学び」の評価
★特に今年はつなぐ学びを行ったことで「子どもがどのように変化したか」について授業中の児童の様子やアンケート、成果物などから見取っていきたい。
→そもそものところ、「何を見たいか」が重要である。「評価ありき」でもいけない。知識定着を見たいならテストでよい。
→教師の振る舞いではなく、子ども一人一人個別の「学びのストーリー」として捉える。
→ストーリーを語るために、詩的・文学的センスを発揮することを躊躇わない。主観的でよい。(仮に違和感があればそれが思考・議論を誘発する)
→ニューマテリアリズム、ポストヒューマニズム。子どもの学びを見て、記述するというときに、その子の周囲・環境に注目するということ。そして教師もひとつの環境である。回折的方法論。