以前よりお知らせしておりますとおり,敬愛大学阿部研究室は,ストップイットジャパン株式会社らによる,いじめ防止教材シリーズ「私たちの選択肢」の開発に協力をしています。これまでに開発した教材については,阿部ほか(2019)阿部ほか(2018)などで発表してきておりました。

これまでの試みをとおして,プログラムの有効性が確認できてきた一方で,この教材を皆様にいかに適切に使っていただくかという課題が生じておりました。詳しくは下記論文に記していますが,本教材は「選択と分岐」「確率に応じた抽選」「抽選による指名」という手法を取り入れながら活用することを想定しています。珍しい手法ではあるのですが,授業を進めるための重要な要素であります。授業を効果的に実施するためには,それらを取り入れる意図や取り入れ方について,実践者に適切に理解をしてもらう必要がありました。

そこで,共同開発者でもある柏市教育委員会と連携し,本教材シリーズの活用方法について学ぶ研修プログラムを実施しました。下記論文は,そのプロセスを記述したものです。市内のスクールソーシャルワーカー(SSW)が各校で実践を展開するという計画がある中で,SSWの皆様を対象に研修を実施したというのが背景です。

阿部学・谷山大三郎(2020)「いじめ防止動画教材「私たちの選択肢」の活用方法について学ぶ研修プログラムの試み」千葉大学人文公共学研究論集、第41号、pp.1-15

【要旨】本研究の目的は、いじめ防止動画教材シリーズ「私たちの選択肢」の活用方法について学ぶ研修プログラムの構想と実践を試み、本教材を多様な人々に実践してもらうためのサポートのあり方を探ることである。研修プログラムの結果からは、授業・教材デザインの特徴について丁寧に説明する時間を設けることと、受講者の感じる不安や疑問にできるだけ丁寧に応えていくという基本的な方針の有効性が示唆された。また、今後へ向けて、「PC操作」「授業中の子どもへの対応」「授業のまとめ方」などの点についての扱いを検討することや、講師の育成や受講者間でのネットワークづくりを進める可能性が示唆された。