昨年度に続き、今年度も柏市立土小学校の校内研究にかかわることになった。(継続的なご依頼というのは本当にありがたいものである。)

「オーセンティック・ラーニング」「いかす学び」「ディスカバー・ストーリー」「問いストーリー」などユニークなテーマを掲げながら実践をされている土小学校。そこになにかスパイスのようなものを(意訳)と依頼され、昨年度は自分の約20年の実践をふりかえりひねりだした「探究的な学びを支える10のキーワード」を加えさせてもらった。10の「コツ」「ノウハウ」ではなく、あくまで「キーワード」として。解釈や省察の深まり、触発性の高まりを願ってのことであったが、お役に立てたのだろうか。研修で楽しくお話させていただいた日の夜は、いつも悩んでしまう(笑)。もっと「コツ」「ノウハウ」っぽいもののほうがわかりやすかっただろうか、いたずらに皆さんを混乱させているだけなのではないか、等々。

それはそれとして、今年度である。今日が最初の研修会、キックオフ!であった。事前に、先生方での研究の方向性についてディスカッションがあったそうだ。上に書いたようなここ数年のユニークでダイナミックな研究・実践について、自分たちがやってきたことはなんだったのだろうかとあらためてふりかえり、「つなぐ学び」という統合的なキーワードを抽出されたとのこと。「つなぐ」という言葉が様々な実践をまとめる言葉として適当なのかどうかは私は分からないのだが(というか、そもそもあらゆる言葉とくに教育の言葉は多義的なのでフラットになんとも言えない)、自分たちの実践をもとに、自分たちでそうした言葉を導き出したということ自体にきわめて大きな意味があると思った。新しい実践の創造にチャレンジする。その実践は新しい実践なので、手垢のついた言葉では説明しきれない。しかし、手垢のついた言葉で説明しないと人にうまく伝わらない。でもそれは違う気がする。新しく、自分たちの腑に落ち、人に伝わる可能性も高い言葉。そうしたものをつかもうとすることが、「授業づくり」においてとっても大事なことである(であった)はずだ。先生方は飄々とされているが、とてつもないことをやられていると驚嘆している。ハイパーリスペクトである。

今年度のテーマが「「つなぐ」学び」ということで、今日は「「つなぐ学び」を考えるヒント」というお話をさせてもらった。先生方の入れ替わりもけっこうあったとのことで、半分くらいは昨年度の「10のキーワード」を「つなぐ」という観点から解釈しなおした内容とし、半分くらいは「つなぐ」から直接連想される自分の知識・経験に関する内容とした。

1.「授業と授業」をつなぐ
はじめに
・鬼滅の刃と名探偵コナン
・▲先生、今日は何やるの? ◯もやもやしたまま授業が終わる
・「時間的発想」を意識した授業づくり

インストラクショナルデザインを「時間的発想」で解釈する
・9教授事象、ARCSモデル
・演出家的発想のススメ
・「問いたくなる」心理とは

ストーリーとして実践を見る・語る
・「王様が死にました。その後、お后様が死にました。」は事実の記述であっ てストーリーではなく、「王様が死にました。悲しみのあまりお后様が死に ました。」がストーリーだ。(参考:大谷2011)
・A)点と点の「意味のつながり」が必要である。 B)点と点のをどうつなげるか。(しかし、さらに、ところが、なぜか、ついに、まさか….. C)学年クラス単位のストーリーだけでなく、 個人単位のストーリーも想定できたらよい。

2.「地域・社会と授業」をつなぐ
地元商店街のPR番組をつくろう(阿部2006)
・「正式な依頼」と「利他的な学び」
・地域とのつながり方も様々である。「教えて下さい」モデルとしての正統的周辺参加論、「お応えしましょう」モデルとしての学びのドーナツ論
・本気で「ごっこ遊び」する
・「志」をともにし「作業」を別にする

3.「生活と授業」をつなぐ
・『生活の中や社会の中での疑問を学びに変える』ためには? 
– 子どもに「変える」能力があるという発想ではなく、誰かとともに「変える」経験を豊富に積むという発想で考えたい。
・『学んだことを社会や生活に活かす』ためには?
– 社会:「利他的な夢」「間接的なキャリア教育」
– 生活:学校も生活の場である、「良い加減」の場づくり