本学の紀要に次の論文(実践研究)を投稿しました。いじめ問題等について考えるための教材シリーズ開発プロジェクト「Changers(チェンジャーズ)」において制作した「大ごとにはしたくない」という教材を用いた実践の報告です。「SOSの出し方に関する教育」として実践しました。この教材では、クラスメイトからのからかいに大きなストレスを感じているものの、先生や親に相談をすると「大ごと」にされてしまうのではと思われ、相談が躊躇われる主人公の苦悩が描かれます。「SOSの出し方に関する教育」の実践には、「あなたはかけがえのない存在だ」と子どもたちに伝えるようなものが多いです。もちろん、大人がそうしたことを本気で伝えようとすることは疑いようもなく大切ですが、一方で、そのように他者から愛されるほどに、「自分はいじめられてなんかいない」「愛する人に心配はかけたくない」「このくらい大したことはないのだ」と自分を欺き、相談を躊躇ってしまうこともあるのではないでしょうか。あるいは、弱さをさらけだすことへの躊躇いもありうるでしょう。本教材ではそういった躊躇いの気持ちを正面から描いています。躊躇いの気持ちについての「そうだよな」「わかるわかる」を出発点として、その上で、「で、どうしたら」と実効的な話し合いができないかと考えました。詳しくは、教材と論文をご覧いただけばと思います。クラスにはまりそうであれば、ぜひご活用ください。Changers教材は無料でお使いいただけます。アカウント登録なども不要です。

阿部学・下大澤翔吾(2023)「相談への躊躇いを題材とした「SOSの出し方に関する教育」の試み―デジタルマンガ教材を活用した授業実践―」敬愛大学教育学会紀要、第2号、pp.47-54

(抄録)本稿は、「SOSの出し方に関する教育」のひとつのあり方として、相談を躊躇う思いを題材とした授業実践について提案するものである。現在、子どもの自殺予防やいじめ防止などの観点から、子どもたちに他者への相談を促す教育が推進されつつある。しかし、他者に相談をするということは、子どもたちにとっては思いのほか容易ではないと思われる。そうした問題をふまえ、本研究では「大ごとにはしたくない」という思いについて中心的に話し合う授業および授業で活用するデジタルマンガ教材を開発した。小学校6年生1クラスを対象とした実践の様子からは、本授業が「SOSの出し方に関する教育」として有効なものであることが示唆された。
キーワード: SOSの出し方に関する教育、援助希求、自殺予防、いじめ、デジタルマンガ教材


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