(A幼稚園の園だよりコラムの転載です)

先日、2階のテラスを見たところ、K組(1,2歳)の子たちが水遊びにいそしんでおりました。シャベルを使って、プラスチックのお魚さんたちを、バケツからバケツへ「お引越し」です。何度も何度もくりかえします。一見するとほっこりする様子ではありますが、数をかぞえたり、水の感覚を身体で感じたり、友達と楽しさを共有したり、子どもたちは実に様々なことを学んでいるのだとも思います。

子どもたちは、遊びの中でシャベルのような「道具」を必要とします。わかりやすく言えば「おもちゃ」とも言えるものです。こうした「おもちゃ」は、子どもの遊びにおいてどういう意味をもつものなのでしょうか。実は、子どもの「遊び」(ごっこ遊び、砂場遊び、など)の全体像を捉えようとする研究はたくさんあるのですが、そこで使われる「おもちゃ」そのものについての研究はとても少ないのです。ここでは、「おもちゃ」がもつ意味について、ちょっとテツガク的に考えてみたいと思います。

「おもちゃ」は「遊びの入り口」となるものです。たとえば、テラスに初めて出るとしましょう。もしそこに「おもちゃ」が1つも置かれていなかったら、その子はそこで何をしたらよいのか(何をしてはいけないのか)が分からず戸惑ってしまうかもしれない。しかし、そこに「おもちゃ」が置かれていたとしたら、それは「ここは安心して遊んでいい場所だよ」「この道具を使いなよ」というメッセージとなりえます。子どもはシャベルに向かって走り、「入り口」を開け、そこで「お引っ越し」を始めるでしょう。

また、「おもちゃ」は遊びの道筋を子どもに「それとなく」教えてくれるものでもあります。シャベルはその形状からして、自ずと何かをすくいたくなるものです。一方でバケツは何かを受け止めたそうに待っています。「おもちゃ」は、子どもたちに遊び方をほのめかし、強制ではなく緩やかに遊びの世界へ誘ってくれます。最初は緊張してしまう子でも、「おもちゃ」に誘われ、「遊ぶのって楽しいんだ」「こうやって遊べばいいんだ」とだんだんと理解をしていくでしょう。そうした意味で、「おもちゃ」は「遊びの入り口」なのです。

「遊びの入り口」である「おもちゃ」は、子どもに遊ぶことへの安心感を与え、いろいろなことを感じたり考えたりする契機を与えてくれます。特に、K組のように「遊びはじめ」の時期にある子どもたちにとっては、「おもちゃ」はとても大事なパートナーとなるでしょう。将来的には幼稚園部門(3歳〜)のように、自分たちで「おもちゃ」をつくり出していく時期に移行していくはずですが、最初に書いたような風景は、そこへ至る最初の一歩なのかもしれない、そんなことを思いました。