(A幼稚園の園だよりコラムの転載です)

年度末が近づいてきました。もちろん一人一人の人生は続いていく訳ですが、今の◯◯組さんとしての生活には、いったん区切りが与えられることになります。

区切りの時期には、日々の喧騒から離れいったん落ち着いて、この1年はどんな1年だったかと「ふりかえる」ことが大事ですよね。保育(あるいは子育て)で言えば、「この1年、この子はどう発達・成長したのだろう?」と考えることになるでしょうか。

ところが、いざ「ふりかえり」を行おうと思っても、それはなかなか難しい! 「ふりかえりが大事だ」ということを、私たちはなんとなく理解しているとは思うのですが、「具体的にどうすれば?」という問いに答えるのは簡単ではありません。「ふりかえり」のやり方やコツってあるのでしょうか? 

特に、保育については、難しい。高校生の定期テストのようなものであれば、「今回は60点だった。できていない所は明らかなので、そこを復習しよう。勉強時間も足りなかった。次は早めに取り組めるよう計画を立てよう」といったようにシンプルに反省すればよいはずです。一方で、保育や子育ては、そんなふうに数値的に、客観的に、科学的に捉えられるものばかりではありません。では、どうすればよいか…?

数字では捉えられないようなものを捉えるためには、――地道なやり方になってしまいますが――人間としての想像力をフル稼働させるしかないと思います。落ち着いて1年をふりかえり、子どもの姿を思い出す。思い出すからには、何かしらの意味があったからでしょう。その子どもの姿に驚いたのか、嬉しくなったのか、不思議だったのか……そうしたことを思い出し、そのことを思い出すわけをじっくりと考え、できれば親しい人とともに味わう……そのプロセス自体が重要であるはずです。

保育や子育ては「テスト」ではない、つまりロボットやAIによって簡略化・自動化できるものではない。だからこそ、このようなきわめて「人間的」な営みを大事にしたいと思うのです。ロボットでなく、人間のやることです。時間はかかり、すっきりとした結論もでないことも予想されます。でも、逆に言えば、非効率的な「ふりかえり」こそ、私たちに許された人間らしい「ふりかえり」と言えるのではないでしょうか。

A幼稚園では、生活展の際に1年をふりかえる冊子が配られます。こちらは教職員の側の目線からの「ふりかえり」ということになるでしょう。「ふりかえりといっても何も思いつかいない〜」という人でも、あるひとつの解釈を見たならば、触発されていろいろなことが想像されるということがあると思います。ぜひ、おうちでもページをめくりながら、じっくりと、ゆったりと、時間をかけて、1年をふりかえってみてほしいと思います。