2017年に上梓し、ここのところずっと欠品となっておりました伊藤晃一君との共著『授業づくりをまなびほぐす』(静岡学術出版)を、オンデマンド版として再発しました。人の思考は進歩してしまうものでありまして(進歩していると思い込んでしまうという方が正しいかも)、何ならこのまま絶版でも良いかとも思ったのですが、もう少しだけ生きながらえさせてみようかと思った次第です。と言いつつオンデマンド版ということで、永遠の生命を与えることも可能にはなったのですが。
せっかくですので、内容自体とははなれた小話を。本書は、悪ふざけをしているようでまじめなことを言っているような本であり、まじめなことを言っているようでただ悪ふざけをしているような本でもあり、その人の「授業づくり」についての価値観とか背景によっていかようにも解釈が可能な本であったと思います。なんとなくそういうことを想定しつつ本をつくり、数年のうちに色々な方から感想をいただき、はっきりと自覚しました。ふざけて書いた部分が大まじめに受け取られていたり、まじめに書いた部分がただただ面白い記述として読まれていたり、作者としては「意図どおり」に意図どおりに受け取られておらず、そしてたくさんの声が私に直接届くということに、大変興味深い思いでした(「授業づくり」とは、多様な人々による豊かな営みだということを再確認しました)。「授業づくり」を楽しむためには、正しさを正しく説明する本だけでなく、そういうパフォーマティブで遊び心のある本「も」必要であり、本書がそうであったらいいなと思っていたのです。初版から数年ではありますが、時代も教育も大きく変わっています。次はどこにどう誤配されていくのだろうか?
もうひとつ。本書を出した後、それほど遠くない時期に、続編を出したいなと思っていました。『教材づくりをまなびほぐす』という題で、「授業づくりをクリエイティブに!」という本書とは真逆の「教師のクリエイティビティを否定する!」という字面だけ見たらショッキングな議論をしたいと思っていました(もちろん、否定しつつ肯定し、肯定しつつ否定するつもりなのですが)。……が、なかなか事は予定どおりに進みませんね……苦笑。この続編で語りたいことは、また別のかたちで提出することになりそうです。というか、まだ、「できたらいいな」と妄想している段階です。