※A幼稚園 園だよりコラムの掲載です。

A幼稚園には、他の幼稚園とはちょっと違う、オモシロイ特徴がたくさんありますよね。今回は、「環境」というキーワードから、そのオモシロサの1つについて考えます。

そもそも幼稚園は、それそれの園が勝手にテキトーに子どもを遊ばせている訳ではありません。国などが「こういうことを大事にしながら保育をしてね」という方針を定めており、それを受け止めながら自分たちの園にできることを考えています。

その方針の1つに「環境を通した保育」というものがあります。つい触れたくなるモノや、一緒に過ごしたい友達、居心地のよい場所など、様々な意味でのステキな「環境」を子どもたちに用意してあげようという発想です。大人の指示どおりに子どもを遊ばせるのではなく、子ども自身が遊びの主役となり、自分の意志で自分の好きな「環境」に触れ、自分の世界を広げていってほしいという考え方です。

「環境」が大事ということになると、当然、園舎や保育室のつくりも重要な要素となります。さて、改めて考えると、A幼稚園の保育室って、どんな「環境」でしょうか? 

一般に、子どもの遊びが生まれる「環境」には、次のような特徴があると言われています。たとえば子どもがぐるぐると動き回れるような、行ったり来たりしやすい造りになっていたり、秘密基地のように隠れられる場所があったり……まるで探検するかのように遊び回れる「環境」です。もし、そうした発想で保育室をつくろうとするなら、「ここからあちらまで動き回れるように……」「この辺に子どもが隠れて……」といったように、建築家さんは子どもの動きや遊び方をあらかじめ予測して設計をすることになるでしょう。

A幼稚園がオモシロイのは、そういう発想にまるでなっていないところ(そこが、オモシロイのです!)。4月を思い返してください。どのお部屋も中はからっぽ。上に書いたような特徴は何もありません。それでも、この時期のお部屋には建物も品物もたくさん並んでいます。しかも、所々裏手に回れるようになっていたり、隠れ家のようなスペースもあったり……。このA幼稚園では、建築家さんではなく、子どもたち自身が、自分たち手で「環境」をつくりあげていく(先生とちからを合わせながら、ですが)。彼・彼女ら自身が、立派な「建築家」に思えてきます。

一口に「環境が大事」と言っても、その園によって様々な「環境」があるのだと思います。A幼稚園では、子どもたち自身が「環境」をつくっていく。だとすれば、結果だけでなく、現在に至るまでのプロセスに意義があるはず。そこに、A幼稚園なりの子どもの成長の足跡が見えるはずです。生活展ももうすぐですが、ぜひ4月の何もない状態を思い浮かべた上でお部屋をのぞき、そこに至るまでのプロセスを想像してみてほしいです。