2023年度の一年間、探究的でオーセンティックな学びへの転換を目指す柏市立土小学校にいわゆる伴走者としておじゃました(じっさいに伴走してほしいと言われてもいたし、伴走者という表現は流行りのものでもあるのだろうが、なんだかこそばゆくて自分としてはしっくりこない。が、いま他にてきとうな表現が思いつかない。伴奏ならまだよいのかもしれないが、自分が何かを奏でたようには思えない苦笑。それはさてき→)。これまで取り組んできた地域等とともにつくる総合・生活のカリキュラム「ディスカバーストーリー」に加え、新たに「問いストーリー」というテーマにもとづくその他の教科での探究的な授業づくりに挑戦しようとする校内研究にかかわった。
※学校HP https://kashiwa.ed.jp/tsuchi-e/page_20230215102030

探究的な授業・カリキュラムづくりを、事後検討の後出しジャンケン指導ではなくともに進めていくにあたり、手がかりになるようなキーワードが必要だろうと考え(またそれは国が示すような公式っぽい言葉の代弁(だけ)ではだめだろうと考え)オリジナルの「探究的な学びを支える10のキーワード」を、年度はじめに先生方にお伝えした。自分の研究・実践人生をふりかえり捻出したもので、責任をもって本気で語れる言葉を選んだ。そして学校の方では、各教科での「問いストーリー」をつくるにあたり、上のキーワードから好みのものを選んで、参考にしながら構想をすることにしてくれた。かくして一年をかけ、全員が独自の授業を構想し、実践がなされた。結果、講師役の私の方が刺激を受け学んでいた気がする……というのが正直なところ。
※「探究的な学びを支える10のキーワード」について http://abemanabu.net/archives/2431

先日、さいごのまとめの会が行われた。ポスターセッション形式での全教員の発表ののち、今後へ向けてのお話をした。下にあるように「カリキュラムは、半返し縫い」という考えにもとづき、次年度の構想を実りあるものとするために、先を急がず、今年度のはじめ(つまり、年度はじめに阿部が提示した「10ワード」、学校が設定した「オーセンティックラーニング」「問いストーリー」という言葉)に一度立ち返ってみることにした。長くなったが、本記事の趣旨はそのときの話の備忘録である(文脈が分からないと意味が分からないかもしれないが)
※学校HP https://kashiwa.ed.jp/tsuchi-e/blogs/blog_entries/view/244/6346c18cc27ce67f91b14b495dc96ca9?frame_id=250

とにもかくにも、このように継続的に学校現場にかかわらせていただける機会は大変ありがたいものである。ちゃんと役に立つために、自分自身のレベルアップが必要だと強く感じる。今年度の経験を、私も今後に活かしたい。


今後へ向けて(今日のお話)
カリキュラムは、半返し縫い」(ある保育者のことば)

原点に立ち返りつつ、
次のカリキュラムをどう編むか
考えてみたいと思います。

 ↓↓↓
・原点に立ち返る①「探究的な学びを支える10のキーワード」
・原点に立ち返る②「オーセンティック ラーニング」
・原点に立ち返る③「問いストーリー」

10ワード、役に立ちました??
・使ってみて、参考になった/ならなかった言葉はどれですか?
・使ってみて、「阿部語」でなく「土小語」になっていった言葉は?
・10ワードではなく、別の言葉が流行ることはありましたか?
 ↓↓↓
「言葉の意味は使用である」という考え方がある。言葉は、使えないと消えていってしまう。その言葉を使える=自分(の実践)に馴染む生きた言葉である。「使える言葉を残す」「誤解を気にしない」「生きた言葉をさらにどんどん使っていく」「ふざけて使ってもよい」ということをお願いしたい。次年度のキーワードとしたい言葉を精選できるとよい

改めて、オーセンティックな学びとは?
・オーセンティック(authentic)≒ 真正 ホンモノ
・主体的・対話的で深い学び
→proactive, interactive, and authentic learning(学習指導要領英訳・仮)
・多くの場合、教室でしか通用しないルールのもと
抽象的な知識を学ぶだけではなく、
a. 社会・教科・学問の奥深さについて、
b.「いま自分が学んでいる!」という実感をもちながら学ぶ
 ような学びのあり方が示されている。
Q では改めて。今年度の土小実践は、オーセンティックだったのでしょうか?

教育実践を支えるリアリティとファンタジー
・「ホンモノか、否か」という問いに答えるのは難しい。なぜか? 探究が深まっているオモシロイ所には、
リアリティ と ファンタジー の多層構造があるからである(阿部2014)
・教育実践を創造するときに、

 - リアリティを徹底的に追求すること

 - ファンタジーをうまい具合に織り込むこと
  この重なり・バランス・混ぜ具合が重要である。
・土小の今年度は、「リアリティとファンタジー」と対峙してきた
一年間だったのではないか?
 
 - リアリティ:教科内容、社会の再現、具体物…
 
 - ファンタジー:導入の工夫、設定の工夫、おもしろさ…
・どちらに成果があり、どちらに課題があるか。それは先生・実践それぞれだろう。

改めて、「問いストーリー」とは何か?
・私たちは「問い」について熱心に考えてきた。では改めて。「ストーリー」とは何なのか?

・例)「王様が死にました。その後、お后様が死にました。」は事実の記述であってストーリーではなく、「王様が死にました。悲しみのあまりお后様が死にました。」がストーリーだ。(大谷2011)
・A)点と点の「意味のつながり」が必要である。

・B)点と点のをどうつなげるか。
しかし、さらに、ところが、なぜか、ついに、まさか…
・C)学年クラス単位のストーリーだけでなく、
個人単位のストーリーも想定できたらよい。→ 途中個人の思考のプロセスを追うことがあったが、その意味は、単に出来た/出来なかったを追うということではなく、世界に1つの「その子」のストーリーを語るためであったのかも。
・安西先生は「シュート2万本」の単元をどう記述するか?(どう記述すれば、事実の羅列でなく「ストーリー」となるのか?)

まとめ(今後へ向けて)
・「カリキュラムは半返し縫い」である。原点に立ち返りつつ、次に針を落とすポイントを探そう。先を急がず、ふりかえりながら、ゆっくりでいい。でもちょっとでも違うポイントを探そう。そのために→
・「10のキーワード」を参考にして(もしなくても)、自分たちの実践にしっくりくる言葉を抽出してほしい。言葉を精選して、次年度のテーマに反映させられるとよい。意識的にその言葉を使って、語ってほしい。
・「オーセンティック」は、「リアリティとファンタジー」のバランスによって支えられている。リアリティの追求に成果(課題)があったのか、ファンタジーの織り込みに成果(課題)があったのか、それぞれ考えてみてほしい。次年度、さらにリミッターを外してチャンレンジしてほしい。
・「問いストーリー」というからには、学びをストーリーとして語りたい。つまり、点と点をつなげる意味を探り、接続詞を意識して語るということ。学年クラス単位でも、できれば個人単位でもストーリーを語れるとよい。1つでも語れるとよい。個別性にも意味はある。