(A幼稚園の園だよりコラムの転載です)

私はいま私大で教員をしているのですが、10年以上前の院生時代からA幼稚園にお世話になっており、ある時からこのコラムのご依頼をいただくことになりました。数えてみると、今回のコラムが77本目でした[後に確認したところ78の間違い笑]。これだけ書いていると「今回はなかなかテーマが決まらないな…」と悩むことがない訳ではありません。そんなとき、どうしたらよいか?

ここで、連日ニュースでも取り上げられているChatGPTというツールに助けを求めてみましょう。ChatGPTは、米国のOpenAI社が開発したAI活用によるチャットボットであり、自然言語での質問や指示に、自然言語で応答をしてくれるものです。応答の文章がこれまでの常識では考えられないほどに「自然」だということで、社会のあり方を大きく変えるだろうと注目を集めています。すでに、文部科学省が学校現場での使い方についてのガイドラインの作成を始めているそうです。

という訳で、ためしにChatGPTに聞いてみましょう。「園だよりに、保護者の方に読んでいただくコラムを書きます。5月の子どもの様子を伝えたいです。2つの案を100字程度で書いてもらえますか。」とチャットに書き込みます。ChatGPTの回答は次のとおり。

はい、以下は保護者の方に読んでいただくことを想定して、園だよりのコラム例です:

【お友達とのふれあい】5月は、新年度がスタートしてから1ヶ月が経ち、お子さんたちも少しずつお友達との関係が深まってきているようです。グループで遊んだり、お話したりする姿が見られ、園児たち同士で楽しく交流している様子が伺えます。

【自主性が芽生えてきた】5月になると、お子さんたちの中には自分でやりたいことを見つけるようになる子が多く見受けられます。自分で上手に着替えたり、お絵かきをしたりする姿が見られ、自主性が芽生えてきたことを感じます。

よく読むとちょっと怪しい所もありますし、創造的かと問われれば頷き難いものではあるのですが、それでも、かなりの程度「それっぽい」文章になっています。このレベルの文章が、ほんの数秒で生成されます。文章を書くということや、ものを考えるということの意味や価値が、たしかに大きく変わっていくのだろうと考えさせられます。

先に書いたように、学校現場でのAI活用についての検討が始まっています。一般的に、こうした類の議論は小学校以降が話題の中心となるのだろうとは思うのですが、私は幼児教育においてこそ、しっかりと考えなければならない課題だと思っています。いまや幼児期がメディアやテクノロジーひいてはAIとの「出会いの時期」であることに疑いようはありません。AIに囲まれて育つ子どもたちにとって、養われるべきAIに対する感覚とはいかなるものでしょうか。「ロボット」としてではなく、「人間」として育っていくために大事になることは何でしょうか。いまは問題提起しかできませんが、喫緊の課題であることは間違いありません。

みなさんは、どう思われますでしょうか?