春休み中の学内FD研修会にて,講師役の依頼を受けました(夏休み中の研修会は自らが企画者であった訳ですが。図らずも年間ずっとFDやっている人になっている…)。今年度のオンライン授業に関する話題提供を,オンデマンドで配信せよという依頼でした。

私は同時双方向型はどうも苦手で,オンデマンド型(本務校ではGoogle Classroom,非常勤先ではMoodleをつかっていました)の方が楽しくやれていましたので,後者についての振り返りをとりとめもなく語ってみることにしました。まとまりはないのですが,年間をとおしてぼんやり考え続けてきたことでもあります。せっかくなので,ここにもメモしておこうと思います。

話した内容は次の5点。

1)偶然をデザインする

  • 授業は、偶然性、ノイズ、誤配があるから面白い(はず)。
  • しかし,オンデマンド型では偶然の出来事が起こりづらい。固定化された情報が発信されるだけで,一方通行になりやすい。学生も「音声を正しく聞く」ことに注力する。それはよいことなのだけど…もっと想定外のことを楽しみたい。授業のグルーヴ感を取り戻せ。
  • 偶然性・ノイズ・誤配を誘発するための,「雑談ラジオ」と「全テキスト全共有」の手法(試行中)。
  • ムーアの「交流距離理論」

2)内容を半分ずらす

  • 従来のような、インストラクション→ワーク→発表→まとめ のセットを行なうのが難しい。
  • ワークの指示を出すところまでで一コマを終わる。各自が行なった作業は、次回冒頭に共有できるようにしておく。後半には新たなテーマに入り、またワークの指示まで進める。
  • 時間内反転授業?
  • シラバスという枠。

3)命をかけるタイミング

  • 従来:授業中のその場でのやりとりに命をかける? 熱血指導,即興的な対応,一人一人に寄り添う…
  • オンデマンド型:授業前(特に1コマ目開始前)ルールのデザインに命をかける。
  • この授業は,いかなるゲームなのか、プレイ方法は,いつ課題がUPされるのか、どうフィードバックが返るのか…等々をデザインしておく。
  • 古いけどファミコン型。リリースしたら直せない。教師の都合でちょくちょく変えない。ただし,合意あればアップデート。

4)話し方を気をつけた

  • 以前にもまして,指示・発問は明確に。 例)発問の際は、前提を明示する
  • 「説明する」のではなく「話しかける」。
  • 気持ちを代弁しながら進める。
  • オンライン授業の困難には,「おれもこまっているんだよね〜」
  • 「本編」と「雑談」ではノリを変えた。
  • 声から受け取る情報の比重が増える。

5)音質にこだわりたい

  • 当初は、AirPods Pro で収録,ある時、「音が悪い!」と気づく。
  • 小学校での遠隔授業の研究実践もあったため、YouTubeでマイクについて学習し、コンデンサーマイクを購入。
  • HyperX QuadCast と,yeti nanoを試す。どちらも良き。
  • 音質はかなり向上したと思う。が,自己満かもしれない。が,それでもよいじゃないか。私たちも今を楽しもう。

(付記)特に「偶然をデザインする」ということは,オンライン授業のみならず教育実践全般を考える上でのとても大事なポイントではないかと考えています。教育活動について考えようとすると,教育内容が正しく扱われているか,それらが適切に配置されているか,ということをつい真剣に考えてしまいます。そうした思考は,疑いようもなく重要であり,教育という営みの本質的なところなのかもしれません。ですが,その上で,ある意味では非本質的な偶然やノイズや誤配というところに,実はとっても大事なものが潜んでいるのではないかと私は思うのです。一見すると非本質的なところに,本質があるのでは? 「偶然のデザイン」なのか,「教育学の非本質的思考」なのか,「遊び心」なのか,どういう言葉でこの課題を語ろうか,ずっと考えています。